人並みになりたい

ただただ思いついたことを書く。失恋しがちな社畜の記録。

ダメ男製造機再び〜秋の陣〜

 

おひさしぶりです。

最後の更新からどのくらい経っただろうか…

 

この間にもいろいろあった、というか、ありすぎた。

 

 

 

かくいう渦中の彼は、今は北の国へ出張に行っている。

12月いっぱいは帰ってこない。

10月頭から旅立って行った彼とは、あの事件以来仕事で一度言葉を交わしたのみだった。

一言で言うと、不完全燃焼。

そんな鬱々とした思いを抱いたまま、私は第二の事件の日までを過ごしていた。

 

 

今からおよそ一ヶ月前に遡る。

職場で仲の良い先輩後輩と飲みに行った日の帰りだった。

その後輩と先輩(どちらも男性)とは、よく3人で飲みに行く仲だった。

今回も、いつも通り職場の近くの居酒屋で飲んでほどよく酔った帰り道だった。

なんらいつもと変わらなく話していたその先輩が、二人きりになった途端ポツリポツリと話し始めたのであった。

実は彼女と別れていたこと。

 

その先輩はとても仲の良い彼女がいた。職場の全員が知っている仲で、みんな当然のように彼らは結婚すると思っていた。

だが、現実は違ったらしい。周りがプレッシャーをかけすぎてしまったのだろうか。

 

先輩の彼女のことは詳しくは知らないが、とても綺麗な人であったことを覚えている。

当の先輩はというと、菅田将暉に似ている所謂イケメン(第一の事件の先輩と区別するため、以下、菅田先輩と呼ぶ)。中身も申し分ない。いつも爽やかで誰も怒っているところを見たことない、生きた七不思議のような人物である。みんなが嫌がる仕事も文句ひとつ言わずに率先してやってくれる、一周回って恐ろしい男だ。

そんな美男美女の、誰もが羨むような二人が、実は別れていたのだ。

他人のことなのに、ショックだった。

 

今までその破局の話を誰にも言わずにいたなんて、いかにも彼らしかった。

周りに気を遣わせたくなかったのだろう。

こちらも、普段接していても全く気づかなかった。

 

しかし、そんな彼が衝撃の言葉を発するのは、間も無くのことであった。

 

 

「俺にしない?」

私は耳を疑った。あのみんなの憧れ菅田将暉先輩が、別れていて、挙句、私に?

耳を疑う理由はまだある。何故なら私はずっと、菅田先輩に片想いの彼のことを相談していたのだ。

あの日の事件のことも、もちろん話していた。

私は確認をした。彼のことはまだ諦めていない。北の国に出張に行っている彼も、1月には戻ってくること。戻ってきたら、また私は彼に思いを伝えるべく、仲を縮めるために食事に誘う予定であったこと。全てを話した。

だが彼は「それでも良い」と。

俗に言う板挟みだ。

 

とりあえず返事は保留にして、その日は逃げるように帰った。

 

 

 

その日からしばらくは何事もなく、菅田先輩もそのことについては特別触れてこなかったので、きっと一時の気の迷いであったのだと思い、こちらもとても心穏やかに過ごしていた。

 

だが、災害は忘れた頃にやってくる。

 

 

告白事件から3週間が経とうとしていたある日。

また、いつものメンバーで仕事帰りに居酒屋へ向かった。

久しぶりに日本酒を飲んだのでとても気分がフワフワとしていた。

 

帰り道、例の話(先日の告白のこと)について話しがあると言われた私は、お酒を飲んでいて判断力が鈍っていたこともあり、彼の家に言われるがままについて行ってしまったのだ。

 

前の男(マザコン野郎)には女としての魅力を感じないと言い放たれ最後の一年はご無沙汰であった。ただ身の回りのお世話だけする家政婦。

実質、私の身体は3年以上未使用であった。

そんな女として枯れ果てた私が一人の男を欲情させるようなことはないだろう。それに最近フラれた事実が物語っている、私の女としての魅力のなさ。だから、私が相手ではなんの間違いも起きないだろう。そう謎の自信を抱いてこの3年間生きてきた私は、なんの疑問も不信感も抱かず、ホイホイと彼の家に上がってしまったのだ。

 

 

家に上がってからは、帰り道のコンビニで買ったラーメンを啜りながらしばらく前回のことについて話していた。とりあえず私も自分の考えを菅田先輩に伝えた。

菅田先輩が私と付き合いたいと思うのは、まだ彼女のことが忘れられない寂しさから来る気の迷いであること。

私は例の先輩をまだ諦めていないので、完全に私が彼を諦めるまでは付き合うことはできないこと。

ここまで話して、沈黙が訪れる。

彼からの返答は、ない。

その代わりに、ソファに腰掛ける菅田先輩は、隣に座る私の肩に徐に寄りかかってきた。

私は固まった。ここ3年以上まともに男に相手されなかった私には、突然菅田将暉レベルのイケメンに触れられるということは恐怖でしかなかった。

だが、それと同時に、長女として育ってしまった私の悪い部分が出てきてしまう。

 

 

きっと、彼は寂しいのだ。可哀想に。

 

 

そう思った私は慰める意を込めて、彼の手に触れた。

それが引き金になってしまったらしい。

何があったかよく覚えていないが、これ、ドラマで見たことある。みたいな景色が目の前に広がっていた。

菅田先輩に押し倒されていたのだ。

 

「やっぱり無理だ。」

そう一言呟いて唇を押し付けてきた彼に、私は今更抵抗する気は起きなかった。

頭ではよくわかっている。お互いフリーの身とはいえ、まだなんの関係も結んでいないのに。

こんな酒の勢いともいえるまま流れで身体を重ねてしまって良いのだろうか。

だが、ここで断ると傷心の彼にさらに寂しい思いをさせてしまう。私の身体で彼が少しでも寂しさから解放されるのであれば…と、ダメ男製造機特有の発想で身体を許してしまった。

 

 

結局、寝てしまった。

ことが終わってからも彼は私から離れずに「俺じゃダメ?」と仕切りに聞いてきた。

呪われているのだろうか…

 

数年ぶりの行為の余韻もそこそこに、流石に朝帰りはダメだと、残りわずかな良心をフル活用して無理やりベッドを抜け出し、小雨降る家までの道を送ってもらう。

夜中の道を歩きながら、もう一度彼に確認をした。

告白は気の迷いからくるものではないかということ。しかし私は彼を諦める予定はないので辛い思いをするのは菅田先輩になるであろうこと。

だが彼は「もう俺の心は決まってるから、あとは君が決めることだ。」と。

私はまた返事ができないまま、その日も帰宅した。

 

 

 

 

あれから1週間以上が経つ。彼とは職場ではごく普通に会話をして、何事もなかったかのように接している。やっぱり、あの日の夜のことはお互いなかったことにしたいのだろうか。そう思った私は、特別その事件についても触れないようにしていた。

一方こちらはというと、子宮直結カスタマイズになりがちである残念な私らしく、多少彼が気になる存在になってきてしまっていた。

だって顔が良いんだもの。

 

だがそう思う度、ダメ男製造機の私は、ネットや恋愛教本で何回も飽きるほど見た言葉を、自分に言い聞かせるが如く思い出していた。

『付き合う前に身体を許したら終わり』

だから、今回も終わったのだ。

それに自分でもわかっている。私の末路は、いつも男専属の穴つき家政婦。彼氏彼女という対等な関係など築けない。

なんでもやってあげてしまう長女気質が前面に出てきてしまい、なんでも尽くし過ぎてしまう。都合のいい時には身体だって差し出す。

それが今回正式に付き合う前に身体を差し出してしまったのだ。家政婦どころか、よくてただの生きたオナホになるのが目に見えている。

 

そう思って、菅田先輩のことは綺麗さっぱり忘れ、本来の目的通り北の国に現在いる彼にしっかり向き合おう。完全に燃え尽きるまで、追いかけよう。

そう決意して過ごしていた……

 

 

が、今日、菅田先輩からラインがきてしまった。

前の謝罪を込めて全てリセットするためのご飯に付き合ってほしいと。

私はどう答えるべきなのだろうか。

果たして、選び進んだ道の先に、私が求めるものはあるのだろうか。

 

 

そこで私は、北の国で頑張っている彼に連絡をしてみた。これで返事が来なかったら全て諦めよう、そう思って。

だが、返事が来てしまった。

私は今人生の窮地に立たされていると言っても過言ではない。

 

付き合った前に肉体関係を結んでしまったとはいえ、好意を寄せてくれている菅田先輩にするか。不完全燃焼で終わった彼にもう一度向き合うか。

正解は、神様でさえもわからないのかもしれない。